Stage04-06

 閃光。閃光に次ぐ閃光。
 光の向こうを、黒い影が疾駆する。
 二本の脚で確かに地を踏みしめ、左右対に伸びる腕に、鋸のような歪な太刀と、ライフルによく似た何かを携えたその姿は、紛うことなく人の姿。否。禍々しい漆黒の鎧に身を包み、黒い軌跡を襤褸切れのように振り乱すそれは、死神というに等しいだろう。
 アクゼリュス。またの名をA1級。それがこの眷属に与えられた識別名称だ。
 残酷という意味をこめられたその名を示すかのように、死神は無感情な冷たく赤い単眼を頭部の隙間から輝かせ、無感情に閃光の掃射を足元を行く歩兵へ浴びせていく。
 死神が動くたび、行く先々で地が唸り、岩の欠片とともに、軍服に身を包んだ歩兵が何人も舞い上げられた。

「こいつはすげえや」
「酷い……」
「そうだな」

 対峙する鈍色の天使に搭乗した藤屋、レイジ、東堂が、自分たちの機体を岩影に伏せて隠れさせながら口々に言う。
 言うだけならタダだ。生体ミサイルによる絶え間の見えない遠距離攻撃に頭を抑えられているおかげで、まともに動けば旧の木阿弥というやつだろう。彼らが登場してきたおかげでいい状態に好転したかといえば、必ずしもそうとは言い切れないが。

「そうだなって東堂さん、助けないんですか?」

 爆音のBGMの中でレイジが声を荒げる。
 今にも自分の隠れた岩場から飛び出し、A1級へ飛び掛って行きそうな彼へ、東堂は銃口を僅かに動かして見せながら答えた。

「そうだな。死にたきゃそうしろ。俺が殺してやる」
「……わかりました」

 気に食わないという風な返事。それ切り、レイジの通信回線が遮断される。

「引率の先生はご苦労様だねえ」
「そう思うなら変わってくれよ」

 タバコでもあったら無意識のうちに咥えて火をつけていたところだ。
 藤屋の言葉に、ため息をはきながら東堂が答えると、苦笑しながら、気分を紛らわすようにぽつぽつと呟き始めた。

「歳をとるってのはよくねえな。慣れちゃいけねえものにも慣れちまう。まあ、こんな時代だ。慣れなきゃやってられねえってのはわかるんだけどな」
「それが大人になるってことじゃねえのかな? まだ23の俺にはよくわかんねーけど」
「……え?」
「何その反応」
「てっきり三十路前後かと思ってたな……」
「……いいけどさ。いいけどね?」
「悪い悪い。……止んだな」

 完全にではないが、静かになり始めた周辺の様子を耳早く聞きつけ、東堂。
 謝るというよりは、悪さをした子供のように薄く笑いながら20mm突撃砲を構え、遮断されたままのレイジの通信回線を強制的に開かせながら上半身を起こす。

「そんじゃま、行く?」
「そうしよう。――砲撃の間隔を縫って敵A級へ接敵。攻撃を開始する。近接するのは俺とレイジ。藤屋はバックアップを頼む」