Stage04-04

「3番の壊滅確認。ついで5番7番からの通信途絶」

 悲鳴のように響く銃撃音。絶え間ない、草木や岩、自然の城壁を蹂躙する行軍音。
 断頭台にかけられた罪人を、情けという名目で甚振る執行人のようにゆっくり、わかるようにわざわざ騒がしくしながら、確かに絶望は近づいてきていた。

「1番2番、6番8番をそれぞれ下げて対応。応答のないものは死兵と扱う。が、回線だけは開いておけ」
「敵群の中にT級確認! 少なくとも十以上!」
「狙撃班に砲撃後に追撃させろ。2発も同じやつに撃ってられん」
「了解!」

 報告に指示を返せば、入れ違いに状況が変動する。
 これではまるでイタチゴッコ――いや、終わりはある以上、トカゲの尻尾きりだ。問題は、どちらの尻尾が先に無くなって胴体を刻まれるか、そこにある。
 しかし相手の尾を切りに行くにも――

「多すぎる……。手がまったく足りねぇな」

 王が頭を掻きながら呟く。
 慣れというやつだろうか。初めのうちは苦しいだけ、いつ死ぬかもわからない緊張の糸が緩む間もなかった戦況。しかし気がつけば、このギリギリの戦いが癖になっている自分がいた。
 チェスと、いや、数多にある勝負事のほぼすべてと同じだ。互いに力量差がないからこそ熱くなれる。

「しかたねぇ……おい! 手の空いてるやつに機関銃持たせて迎撃の準備しとけ! ここでドンパチやっぞ!」
「まじっすか!」

 周りで待機していた、通信相手のいなくなった兵士たちがコンソールに持たれていた頭を上げ、嬉々して返事する。

「嬉しそうな顔すんじゃねえよ馬鹿野郎!」
「へへっ……。そういう大将だってにやけてるじゃないっすか」

 顔に出ていたか、なら仕方ないな。
 王は、隠そうという努力を止め、薄汚れた小汚い歯を見せて笑いながら壁に預けていた銃を手に取り、肩にかける。

「馬鹿か。これは……そう、最近運動不足だからな」
「敵群さらに増加! この速さは……A級が来ます!」

 その報告が叫ばれた瞬間、場の空気が一変した。
 A級。光線を放つC級が戦闘機の天敵だというならば、これは戦車の天敵だ。
 人型という、近代兵器的に見れば理解に苦しむ形をしているにも関わらず、高い機動性を発揮する大型の眷属。戦車のような足の遅い兵器では対応することの難しい難敵。
 どういうことだ、と王も一瞬思考が停止する。敵は確かに本腰を入れたように、数を増やしてこれまでにない物量で押しつぶしに来ている。これにA級を乗せるなど、オーバーキルにも甚だしい。
 敵の目的が別にあるのか。それとも、王自身が敵の行動パターンを見誤ったとでもいうのか。

「1と2どっちだ!」

 どちらにせよ、目の前の敵を片付けなければこの後悔を次に先立てることは出来ない。
 まず敵が近距離と遠距離のどちらかを見極めてから対応策を――

「ど、どっちも――熱源! 生体ミサイルが来ます!」

 ――完全に見誤った。王はここでそれを理解した。
 敵の目的が別にあるという問題ではない。近距離型だけでなく、わざわざ足の遅い遠距離型も連れてきているということは、殻に篭った自分たちを殻ごと粉砕するつもりだということだ。

「弾幕!」
「間に合いません!」

 上げた視界の先、司令室の汚れたガラス越しに写る空に、黒い点が疎らに飛来する。
 万事休す。
 王が素早く、ポケットの中に潜ませている核の起爆タイマーのリモコンへ手を伸ばすとほぼ同時に、激しい爆音が響いた。