Stage02-10

 刻々と激しい変化を見せる状況に、流石の天道瞬次もため息を吐いた。
 これでは良くも悪くも訓練にならない。味方同士で争わせたところで、ミサイルを多く同時に撃てるものが勝つことは明白なのだ。
 そんなことをやるぐらいならば継続して不整地の行軍訓練をやりたいのだが……、上官、それも最も高い位についている人物からの命令である以上、彼には頷く以外の選択肢がない。
 が、それでもため息をつく権利ぐらいはあるはずだ。
 天道は腕を組みながら、これ以上ないほど力いっぱいにため息を吐く。

「あんたも大変だな……」
「まさかあなたに同情されるとは思いませんでした」

 この味方同士を戦わせるという無駄ばかりが見出せる素晴らしい御願いを伝言で頼まれていた、首に爆弾を巻かれた囚人、スコット・スタンフォードの言葉に、思わず頭を抱えながら天道は答える。

「……あの人よりはちゃんと使いますよ」
「……ありがてえ、一生ついて行くぜ」

 特に言葉も交わしていないのにも関わらず、まるで100年の付き合いであるような雰囲気が彼らの間に生まれていた。
 その視界の隅で、忘れられたように作業しているラピスもまた、ため息をつきながら口を開く。

「……バカばっか」

 そう、その男同士の友情のような図柄の2人であっても、そこに哀愁が漂っているのだけは事実だった。

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「うっわー。3人がかりでもダメだったっぽいですよ高野さん。どうします」

 玲、あやめ、イングリッドの3人が爆煙の向こうに消えるのを遠目のビルから見ながら、成瀬が足元にいる高野へ問いかける。その隣にはもう一機、石雛の機体があり、成瀬の隣のビルには金森が狙撃砲を構えて陣取っている。天道に捕まるよりも早くサボりを開始していたリュドミラ、アスィ、歩を除けば、彼らがエンハンスド最後の戦力と言えるだろう。

「じゃあ4人でやればいいんじゃないの。丁度4人残ってるし。それよりも問題は……」

 周囲に並ぶ機影を目で数えながら高野が呟く。
 その数は4。そして、本日の彼の衣装である某サイボーグは9人のチームだ。全然足りない。戦隊物だと言い張ればよかったのかもしれないが……。

「4人じゃ切が悪いよなあ。3人か5人ならよかったんだが」
「何の話ですか」
「いや、こっちの話。ということで――うわ、もう来た。各自その場その場の判断で!」

 残念そうにぼやきながらも、年長者のお役目を果たそうとどこか間の抜けた声で音頭を取り始めたとほぼ同時に、紅い機影が彼らの元へと空を直進してきた。
 高野は咄嗟に声をあげながら、軽く呆れてため息をついた。流石に、低空を滑空するぐらいは可能だとしてもこれはない。どんなチートだ。もうほとんど飛んでるじゃないか、あれは。002のつもりか。は、いいな。今度自分の機体にもつけてもらおう。

「石雛尚花、突貫します!」

 そんなどうでもいいことを高野が考えているうちに、トンファーを構えた石雛が大きく跳躍し、正面から紅い機体へと突っ込んでいく。
 突撃砲での迎撃こそあれど、ミサイルは使われない。幸いなことに使い切ってくれたということだろうか。

「よし、金森援護してやれ……って金森ー!」

 と、誰もが思い、油断した瞬間、申し訳なさ気に放たれたミサイルが金森の待機するビルの屋上を捉えた。
 話しかけていた成瀬がおいおいとばかりに叫ぶのに次いで、レーダーに映っていたシグナルが消える。攻撃の巻き起こした白煙を見上げながら、成瀬は呟いた。

「断末魔すらないとは……金森、可哀想なやつ」
「前を見ろ004。003を援護してやれ」

 言いながら、高野が紅い機体と至近距離で打ち合い始めた石雛の元へ駆け出す。その背を追うようにして成瀬も続いた。
 ビルの陰に隠れて2機の姿は見えないが、金属同士のぶつかる甲高い音が断続的に鳴っては、ビルの崩れる轟音が時折それに混じって響く。殴り合いならば石雛に分があるだろうが、それも確証を持てるようなものではない。

「……誰が004で誰が003なんですか」
「日本人なのにわからないのかッ!?」
「いやなんとなくわかりますけど人数的にあわなくないですか!」
「こまけぇことはいいんだよ! 行くぞ!」

 火花を上げて、高野の機体が戦場へ向けて加速する。
 音はもはやすぐそこだ。今にもそのビルを破壊して敵が姿を現すかもしれない。というのにも関わらず、なんというしまらない空気だ。いつものことでもやはり心配にならずにはいられない。

「……大丈夫なのかねえ……」